ハンガリーのグースダウン視察、「食肉処理場(スローターハウス)編」です

グースから良質な羽毛を採取するにあたって、実はここが一番重要な工程でした。訪問したのはFBZ社とつながりの深い、スローターハウスT社さん。
T社さんはヨーロッパ最大級の工場で、ダック(鴨)の胸肉は日本にも輸出されているとの事。

従業員さんは1600人。
28年前、ゼロから工場を立ち上げた社長さんはFBZ社のバラダッチ氏とは25年来の友人だとか。

もう一度触れますが、一般的にはスローターハウスは羽毛業者さんより立場が上です。
FBZ社さんの従業員数120人に対してT社は1600人。
企業規模から考えても、FBZ社さんが羽毛の品質に対して注文を付ける事はなかなか難しいでしょう。

でも、T社の社長さんとバラダッチ氏は25年来の友人。
共にいいモノを作るために協力できる強固な関係を築かれているようです。

T社さんでダックをふるまって頂くと…



T社さんに到着したのは13時過ぎ。
なんとお昼ご飯を用意して下さいました。

お昼ご飯は、もちろんT社さんのダックのお肉。
品種は「チェリバリー種」。42日間飼育した、3.2kg程度のものだそうです。

お肉になった鳥の飼育期間と重さまでわかるというのは…
ものすごくしっかりした品質管理をしてらっしゃる、のでしょうね。すごい。

最初に出して頂いたのは、ハンガリーの伝統的スープの「グヤージュ」
通常は牛肉で作られるのですが、今回は特別に「チェリバリー種のダック」で作って下さいました。

これね↓



これがですねー。凄くおいしい!!
骨ごと煮てありまして…ダシが効いていて…肉も柔らかくて…
オカワリしてしまいました。

で、次に出して頂きましたのが…コレ↓



同じく「チェリバリー種」のモモ肉の焼いたもの。

これがですねー。またメッチャ美味しい!!
脂がのっていまして…お肉も柔らかく…皮がパリッとしていて…
私はもう「チェリバリー種」の虜です。いやT社さんのダックの虜です
※ハンガリーで食べたモノの中で一番おいしかったです。お世辞抜きで。

同行されていた、貿易会社の方(ハンガリーには20回以上行かれているとか)も
「こんなに”おいしいダック”は食べたことがない」と言われていました。

もちろん、良いダックを出してくださったのが前提でしょうが、
おいしさの秘密は「鮮度」なんだそうです。←これ大事です。

実は、FBZ社さんの出資によりスローターハウスT社さんの工場内に
採れた羽毛をすぐに洗浄する羽毛処理工場ができていまして…まだ稼働して1か月の最新施設も見学してきました。
※今後、当店の「ハンガリー直輸入羽毛」もこの工場で加工されることになります。

精肉と同じように、羽毛も処理してからのスピードが大事でして…
ここで羽毛の鮮度のお話を挟まさせてください。

羽毛は採取後放置しておくと1時間で痛む


↑適切な処理をしていない羽毛です。全体的に色がくすんで
さらに、膨らみも悪いです。

FBZ社CEOバラダッチ氏曰く

「羽毛は、採取後30分から1時間放置されるとダメになります。」
「羽毛は鳥の血液が付いたままにしておくと、酸化してボロボロになる。」
「血液以外の水分が付いたままにしていても、バクテリアが分解してボロボロに。さらに臭いも強くなる」
「ボロボロになった羽毛は、ダウンボールからファイバーが抜け品質が落ちます」

私も知らなかったのですが「羽毛の処理鮮度」
これが重要なんだそうです。

私は釣りをするので、魚で考えたのですが、
”魚臭さ”って、結局血液と鮮度なんです。
釣ってすぐに内臓を抜き、血液を抜いて冷蔵保存するとと”魚臭さ”なんてありません。
コレと同じなんじゃないかな~。

ついでに言うと、FBZ社さんではこのスピーディーに処理した羽毛に
「フレッシュダウン」と言う名前を付け、商標登録申請中なんだそうです。凄いですね。
良い羽毛を生み出すために努力されてます。



↑これは適切な処理ができてない羽毛。
羽毛がよじれて、開きが悪くなっています。

しつこいですがスローターハウス側にこういったリクエストを出来るのは、特別な事です。
普通の羽毛業者だと、羽毛の品質がどうであっても”スローターハウスの言いなり”になるしかないんです。
バラダッチ氏がT社の社長と共に築いてきた協力関係のなせる業でしょうね。

スローターハウスT社さんの工場内へ

T社さんは食肉を扱う工場です。
なので、メモ帳・ペンなどの異物混入につながるものは一切持ち込み禁止でした。

また、いろんな大人の事情で工場内の写真撮影も制約があったので…
ご迷惑をかけてもいけませんから、ほとんど写真はありません。

最初に食肉の加工場(T社にとってはメインの工程)を見せて頂きました。

  • マイナス18度でお肉を保存していたり…
  • 日本に輸出するダック(鴨)のお肉を見せて頂いたり…
    (年間800tを日本向けに輸出してらっしゃるそうです)
  • 小さ目のグースと中くらいのダックを見せて頂いて…断然小さ目のグースが大きくて驚いたり…

などなど。でもこれは本題と関係ないので省略。

その後、問題の採れた羽毛を”即洗浄する新工場”を見せて頂きました。

羽毛を素早く洗浄・乾燥させる新施設に



↑新施設で洗浄・乾燥後の羽毛

食肉処理場で出た羽毛はベルトコンベアに乗って、即この新施設に入ります。

採ったばかりの羽毛を私も初めてみたのですが、その感想は…
「ナニこれキタナイ…」でした。

正直な所、採れたばかりの羽毛はボロクズ状態で臭いもかなり…。
これでは、放置していたら臭うのは当たり前です。

通常のよそのスローターハウスだと、この状態から軽くすすいで軽く乾かすだけです

しかし、こちらではその状態から…

  1. 施設に入ってすぐにすすぎ1回目。
  2. それからもう一度シャワーのように水をかけて2回目すすぎ。
  3. 次は、洗剤を使ってしっかり洗浄。
  4. で、水だけですすいで…
  5. 脱水。遠心分離すると羽毛が痛むので、優しくゆっくりプレスして脱水。
  6. 最後に乾燥。外温150℃で内部を120℃まで上げて乾燥。高温なので羽毛が開きます

と言う行程で洗います。

ちなみに、ハンガリー産のダックダウン93%レベルの羽毛は
特に素早く洗浄・乾燥しないとすぐにファイバーが抜けてボロボロになってしまい取れないそうです。

この新施設が他と比べて優れているワケ

この新施設のポイントとしては、乾燥させるまでは羽毛に常に水を掛ける続ける事
これにより羽毛の酸化を防ぎ、羽毛が崩れないようにするそうです。

さらに、120℃の高温で乾燥させることで、白い花が咲くように
羽毛が開くんです。高温のドライヤーで髪を乾かすとフワフワになるでしょ?と言われていました。
バクテリアの殺菌にも役立ちます。

で、処理して出てきた原毛がこちら



すでに相当白くなっています。臭いとかもうほとんどないし。
最初の状態からすると凄い変化です。しかも水分が残っている感じはまったくありません。



拡大するとこんな感じ。
まだ選別などはしていませんから、フェザーが目立ちますがきれいなモノです。

ここでベール(原毛を入れる大きな袋)に入れられ、
管理用バーコードとIDが付与されます。そしてFBZ社に出荷されるんですね。

では、次は羽毛製造の本丸FBZ社さんです。

当店のハンガリー直輸入羽毛の産地を訪ねて・その4最終工程FBZ社編へ

当店は広島市中区十日市町の寝具専門店です