さて、ハンガリーのグースダウン視察、「最終工程FBZ編」です。
ここまで丁寧に作業されてきた「ハンガリー産原毛」の最終仕上げです。FBZ社は、目立った看板などもなく
「え?ここなんですか?」という作りの、まさに”工場”。
このページの目次
ハンガリー直輸入羽毛製造のFBZ社を訪問
画像中央のグレーの鉄扉をくぐり中に入ると…
高い天井に届きそうなくらいの「羽毛入りベール(袋)」が山ほど。
この羽毛満載のベールが壁になって工場内部はまるで迷路。
FBZ社の人とはぐれてしまったら、出られないかも。
で、すべての「羽毛入りベール」にバーコードが付いています。
入荷すると、中の原毛をサンプリング(試料をとる)して全原毛につけられます。
↑こんなのです。バーコードとIDにひも付されたデータによって
生産農場とか採取した日付とか…すべて辿れます。
食肉業界では当然のシステムなんだそうですが、
羽毛業界ではなかなか。
キツイことを言わせて頂きますと、
しっかり元をたどられると”販売元が困る”ような羽毛が日本国内にあふれていますからね。
FBZ社の概要とその羽毛のストロングポイント
序章でも書きましたが、ここでFBZ社のおさらい
- 1985年から羽毛生産をしている(ハンガリーが民主化される前後)
- 現在の工場は2000年に購入。
- 従業員数120名
- 年間5000tの原毛を扱っている
- 取引先はアメリカ・ヨーロッパ・アジア・南アフリカ・ニュージーランドも
- モンクレール・ノースフェイス・パタゴニアなどの有名メーカーの羽毛を生産
- 現在の工場には21台の羽毛選別機と4台の羽毛洗浄機がある。
で、FBZ社の羽毛のストロングポイントは…
- 飼育農場どころかグースのエサや卵まで一貫管理できる
- スローターハウス(食肉処理場)に発言力がある。いろんなリクエストができる
- 出来上がりの羽毛を買う、のではなく元の元から生産管理をして羽毛をプロデュースしている
- 長年の経験の蓄積により、羽毛の品質を生産過程からコントロールすることができる
- ハンガリー中の羽毛(ハンガリー全土の70%)が集積されるので、その中から選別して高品質の羽毛を生産できる
という事。
では、FBZ社に入荷した羽毛のその後を見て行きましょう
入荷した羽毛を選別機にかける
入荷した羽毛を選別機にかけます。
羽毛の選別方法は
- 羽毛をほぐして選別機に入れ、風で飛ばします
- 風で飛ばした先にチャンバーという部屋が4~5つあって
- 軽い羽毛(高品質な羽毛)ほど遠くのチャンバーに飛びます
- 各チャンバー内の羽毛をそれぞれベールに詰めて
- 新たなバーコードを付与したら完成。
です。
↑選別機です右に白い羽毛が見えています。
この羽毛、選別機の中で”フワァーフワァー”と漂っています。
↑チャンバーからのベール(袋)詰めのマシンです。
量りが付いています。
どうも、最初のサンプリング時に「羽毛の品質別の取れ高」が推測できるようで
その予測値と大幅にズレが出た場合、バラダッチ氏にすぐ電話が入るそうです。
※「寝てるヒマがないんじゃない?」「そうねーハッハッハ」って言われてました。
実際にはそんなにずれる事はないんでしょうね。
FBZでは機械任せにしないで、ここでも再サンプリング(試料採集)し
ベール(袋)ごとに必ず人間が目視して確認しています。
↑ふるいバーコード&IDを外し新たなバーコード&IDを付与。
もちろん古いバーコードとのヒモ付けをします。
選別した羽毛を洗浄する
洗浄機は「L.H.LORCH」(たぶん機械メーカー名)
ドイツ製です。洗浄する洗剤もドイツ製。
ハンガリーは基本硬水なんですが、洗浄には特別な「軟水」を使っています。
その理由は…
- 水の粒子が細かいので羽毛の奥までキレイになりやすい
- 洗剤の泡立ちが良く、キレイになる
んです。ちなみに中国の羽毛は硬水で洗っています。
後にも出ますが、”当店のハンガリー直輸入羽毛”は洗浄後の洗浄水の透明度基準が厳しいです。
これは洗浄後の洗浄水がキレイであればあるほど数値が高い、つまり臭いにくいというものですが…
一般的な羽毛の洗浄度の基準は…
- ヨーロッパ・350mm
- アメリカ・500mm
- 日羽協(ハクチョウのマーク)・500mm
- 当店の直輸入羽毛・1000mm
となっています。他と比較してもキレイに、丁寧に洗ってもらっています。
そうそう、
時々「国内で3回洗浄しました~」と謳っている羽毛を見かけますが、
あれは”国内で3回洗わないと臭くて使えない”からなんだそうです。
私はそういう羽毛布団は使いたくないですー。
洗浄した羽毛を脱水・乾燥
もちろん、ここでも羽毛を痛めてしまう「遠心脱水」ではなく
「圧縮脱水」で大切にやさしく脱水します。
羽毛の乾燥機には2種類あって…
- ガス式乾燥機・・・普及しているタイプ。内部温度は90℃までしか上がらない。
- オイル式乾燥機・・・少ないタイプ。内部温度は最大230℃まで上がる。
の2つがあります。
FBZ社では大型のオイル式乾燥機を使い、短時間かつ高温で(150℃程度。230℃まで上げると羽毛が焦げちゃう)
羽毛を乾燥しています。余力があるオイル式乾燥機のほうが温度が上がりやすいんでしょうね。
大きな乾燥機で高温乾燥するとダウンが開き、羽毛がよりフワフワになります。
品質を均一にするため撹拌する
で、同一ロット内の羽毛を均一にするためにまぜます。
同一ロット内の複数のベールに入った羽毛を巨大な攪拌機にいれて混ぜるんです。
イメージとしては、巨大なお祭りのガラガラくじ。
次は品質管理室。
品質管理室へ
各段階でサンプリングされた羽毛はこの品質管理室で検査されます。
↑これ左がFBZ社の「フレッシュダウン」(ちゃんと加工した羽毛)
右がそうでない普通の羽毛です。色から違います。
ダウンボール単位で見てみると…
↑普通の羽毛はねじれてしまっています。せっかくの羽毛がモッタイナイ。
その他ケミカル検査室へ
ここでは、先ほど出た羽毛の「洗浄水の透明度検査」をしています。
もちろん羽毛の洗浄水が透明であればあるほど羽毛がキレイになっています。
検査方法は
↑洗浄水を入れた筒を覗いて、この十文字を見るんです。
何mmの洗浄水を通して十文字がはっきり見えるかです。
- ヨーロッパ・350mm
- アメリカ・500mm
- 日羽協(ハクチョウのマーク)・500mm
- 当店の直輸入羽毛・1000mm
当店の直輸入羽毛は1000mm、つまり1mの水深の洗浄水でも
底の十文字がはっきりと見える、という基準です。
羽毛かさ高の検査室へ
続いて羽毛のかさ高性を検査する小部屋に。
私も日本国内で見たことがある検査機です。
室内は気温と湿度が管理されていました。
さっと入って、さっとドアを閉めないといけません。
上の写真で、
- 左の透明な筒状のモノが”かさ高性検査機”
- 右?中央?の金属製の筒が”ダウンパワー(DP)検査機”
です。
”かさ高表示”は、流れ星のように消えてなくなりましたが
あれ、なんだったんでしょうね。
「当店のハンガリー直輸入羽毛」もここでダウンパワーを計測されていますが、
- ”430DP”表示が付いている羽毛布団は”440DP”
- ”440DP”表示が付いている羽毛布団は”460DP”
を記録しているそうです。念には念を入れて控えめに表示しています。
余談ですが、
「ハンガリー直輸入羽毛」シリーズのグース90%タイプの羽毛布団(390DP)が、
他のグース90%に比べて”妙に膨らみがいい”と感じていまして…。
これ、あくまで私の経験上なんですが…そういう事だったのかもしれません。
以上が当店のハンガリー直輸入羽毛の生産工程です
長くなりましたが、以上が当店のハンガリー直輸入羽毛の生産全工程です。
私の感想ですが、羽毛布団を使う人の立場に立った工夫が随所に見られてとても有意義でした。
羽毛布団を使う方の思いとそれにこたえる工夫をまとめると…
- 軽くて暖かいものが欲しい→ダウンの開きのが良くなるよう高温乾燥。ダウンが崩れないよう採ってすぐ洗浄乾燥。
- 羽毛の臭いはイヤ→上と同じく採ってすぐ洗浄乾燥。FBZ社内の洗浄でも高いレベルの洗浄水基準を満たす。
- ふっくらして長持ちする羽毛が良いな→高温乾燥でダウンが開く。バクテリア・酸化対策をしてダウンが崩れにくい。
と言うところでしょうか。
これらの工夫、出来そうでなかなかできないんですよ。
これまで、
- 「なんとなくこの羽毛布団は臭いな」
- 「この羽毛布団は、品質表示に書いてあるスペックより膨らみが悪い」
- 「安い羽毛布団を買ったらすぐにダメになった」
と言う経験をされてきた方、一度「当店のハンガリー直輸入羽毛」を見に来て下さい。
きっとご満足いただけます。
私は今回、ちゃんと現場を見てきましたから、
ご来店頂きましたら、”メーカーさんからの又聞きではない”より詳しい情報をお話しできると思います。
もう一度最初から読んで見たい方はこちら↓
当店は広島市中区十日市町の寝具専門店です。
“当店のハンガリー直輸入羽毛の産地を訪ねて・その4最終工程FBZ社編へ” への3件のフィードバック